ヒプノセラピーとは
ヒプノセラピー(催眠療法)は、欧米では医学、心理学、カウンセリング、看護、スポーツの分野で広くその有効性が認められていて、多方面で使用されています。
ヒプノセラピーとは? ―潜在意識にアクセスする心理療法―
欧米では医療現場で用いられる代替医療
アメリカの政府機関である米国国立補完総合衛生センターNCCIHは、催眠療法を補完・代替医療「Mind-body Interventions(MBI 心と身体への介在)」として位置づけています。
心理学の発達と共に催眠療法は19世紀にヨーロッパからアメリカへと渡り、実際の医療現場で治療に活用されてきました。様々な心の問題に対応できる療法で、例えば不安や、うつ病、恐怖症、パニック障害、睡眠障害、摂食障害、肥満、喫煙やなどの依存症などに効果がある心理療法として広く認知されています。
日本でも心の問題を解消するためのセラピーとして近年では広く認知されるようになり、年齢退行によるトラウマの解消、潜在意識の最適化を図る暗示療法・イメージ療法の効果は評価されており、心的問題が改善されることで身体的な病気が治癒される例も多く報告されています。実際に当セラピールームでもクライアントの方々の症状が改善されています。
カウンセリングではできない潜在意識へのアプローチ
安心してリラックスした状態である催眠状態で行われる催眠療法は、催眠状態に入ることで、クライアントの無意識の深層心理にアプローチし、その問題や症状に対して、より効果的なアプローチができるように意識改革を行います。
カウンセリングではなかなか進まなかったクライアントの受容、客観視、認知の修正、理解が、催眠療法によって格段に早まっていくのは、潜在意識という無意識にアクセスできる催眠を使うからこそです。潜在意識である無意識を意識上に上らせることができる催眠状態(トランス状態)に入ると、自分の中からの気付き、新しい理解として受け入れることができるようになります。自分にできるという自己効力感が増すことで、自己肯定、自己の受け入れができるようになっていきます。一度のセッションでも意識が大きく変化する方も少なくありません。
つまりカウンセリングでは到達できない潜在意識への働きかけが可能な催眠療法だからこそ、クライアント自身が望む方向、実現したい人生に向かって踏み出すことが可能になるのです。
「催眠」は「催眠術」ではない
「催眠」という言葉を聞いて誰もが最初にイメージするのは「催眠術」です。しかし「催眠術」とヒプノセラピーの「催眠」とは全く異なるものです。誰もがテレビで見たことのあるあの催眠術ショーでは、催眠術にかけられて「ニワトリになれ!」と命じられると、すっかりニワトリになり切って歩き出したり、普段は嫌いで食べられないものを突然むしゃむしゃと食べ出したします。本人の意思に反して、催眠術師が意のままに出演者を操るその姿はとても衝撃的です。TVショーの催眠術は、いかにも滑稽で奇妙な行動をとる「コントロールされる催眠」でなければならず、楽しむための脚色されたエンターテイメントです。
これに対してヒプノセラピーの「催眠」は全く異なります。ヒプノセラピーの催眠状態はリラックスした状態であり、自分の意志がコントロールを失うことはありません。セラピストによる誘導でクライアント自身が潜在意識にアクセスすることで、癒しや気付きが起こります。ネガティブな思い込みや感情が解放され、本来の自分の本質と繋がり、問題解決の道をたどることを目的としているのがヒプノセラピー・催眠療法です。
潜在意識を扱う心理療法
ヒプノセラピー(催眠療法)とは、リラックスした状態から催眠状態へと誘導し、潜在意識にアクセスしていきます。潜在意識とは、無意識、深層意識と呼ばれるもので、自分では意識していない意識のことです。
◆ 潜在意識はデータの貯蔵庫
潜在意識には、いままでその人が生きて来た人生のあらゆるデータが蓄積されており、記憶も潜在意識にあります。そして潜在意識は無意識に起こる心の反応を引き起こします。催眠療法を受けたクライアントは、全く忘れていた記憶が潜在意識からポンと浮かんでくることに驚きます。記憶は忘れてなくなってしまったわけではなく、ちゃんと潜在意識にあるのです。
◆ 無作為にプログラミングされる潜在意識
この世で最初の人間関係である親子関係では、あらゆるプログラミングが行われます。特に0~5歳は刷り込み期と呼ばれる時期で、潜在意識はスポンジのようにどんなものでも吸収します。人間に対する基本的信頼関係は、この幼児期に形成されます。幼児期の親子の信頼関係が土台となって人間は健全な成長過程をたどることができます。しかし多くの場合、潜在意識は未熟な親の家庭で繰り広げられる、濃厚で過干渉な、または希薄でよそよそしい家族の関わりに強く影響を受け、ぎこちなく偏向をきたすプログラムを作り上げていきます。
◆ 無意識にトラウマが影響する日常生活
大人になってから現れるの心の問題、精神的な問題はこのプログラミングによるものです。潜在意識にはトラウマと呼ばれる出来事がいくつもあります。実生活ではそれらに関連する状況や人間関係が無意識に引き金となって、ネガティブな心の反応を無自覚に引き起こします。
◆ 潜在意識のプログラミングを書き換える
潜在意識に刻み込まれたこれらの反応は、「催眠」を使って潜在意識にアクセスすることで、肯定的なものに変えて行くことが可能です。年齢をさかのぼって記憶を想起し、セラピストと共に視点を変えて事象を捉える過程をたどることで、ネガティブな思い込みや解釈を修正していきます。これが年齢退行療法です。
潜在意識には本人の本来持っている能力、個性、治癒力があり、その力を引き出すためにセラピストによるヒーリング、イメージ療法、年齢退行催眠などさまざまなセラピーの技術によってクライアントの心の状態は肯定的な方向へと向かうようになります。
催眠状態とは? ―潜在意識の扉を開く特別な時間―
催眠と聞くと、「意識を失ってしまう」「操られてしまう」といった、少し怖いイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ヒプノセラピーで行う催眠は、そのようなものとは全く異なります。
一言でいえば、催眠状態とは「意識がはっきりしたまま、心と身体が深くリラックスし、普段は閉じている『潜在意識』の扉が開きやすくなった状態」のことです。
実はこの状態、私たちは日常生活の中で何度も自然に体験しています。
あなたはすでに「催眠状態」を知っています
「催眠」は、決して特別な誰かが作り出す魔法ではありません。例えば、こんな経験はありませんか?
◆ 映画やドラマに夢中になっている時
主人公の気持ちに深く共感し、涙を流したり、ハラハラしたり。周りの物音が気にならなくなるほど、物語の世界に没頭している状態。
◆ 好きな音楽を聴いている時
心地よいメロディーに身を委ね、時間や空間の感覚が薄れていくような、深いリラックス状態。
◆ 電車に揺られている時
窓の外をぼーっと眺めているうちに、考え事が自然に浮かんでは消えていく、まどろんでいるような状態。
◆ 趣味に没頭している時
編み物やプラモデル作りなど、好きなことに集中していると、あっという間に時間が過ぎていた経験。
これらはすべて、顕在意識(普段の思考)の働きが少しだけお休みになり、潜在意識が優位になっている状態、つまり軽い催眠状態の一種なのです。ヒプノセラピーでは、この自然で安全な状態を、専門家の誘導によって意図的に作り出していきます。
催眠状態になると、心の中で何が起こるのか?
では、なぜこの状態が心の癒しに繋がるのでしょうか。それは、私たちの心を「氷山」に例えると分かりやすいです。
◆ 顕在意識(水面に出ている部分):
普段私たちが「自分」だと思っている意識です。「〜すべきだ」「〜してはいけない」と常に考え、分析し、判断しています。氷山全体のわずか5〜10%と言われています。ここは「理性のガードマン」がいる場所です。
◆ 潜在意識(水面下に隠れている大部分):
感情、記憶、習慣、思い込み(信念)などが保存されている、広大な無意識の領域です。氷山の90%以上を占め、私たちの行動や感情の真の操縦士です。
普段、理性のガードマン(顕在意識)は、潜在意識の扉を固く守っていて、「そんなことは非論理的だ」「過去のことはもういいだろう」と、私たちが心の奥深くにアクセスするのをブロックしています。
しかし、ヒプノセラピーによる深いリラックス(催眠状態)は、このガードマンに「少しだけ休んでいていいですよ」と許可を与えるようなものです。ガードマンがリラックスすると、私たちは潜在意識の扉を開き、普段はアクセスできない自分の心の奥深くにある情報、つまり悩みの根本原因(忘れ去られた過去の記憶や、心の傷)に直接触れることができるのです。
ヒプノセラピーにおける「催眠」の4つの約束
あなたの安全と安心を守るため、ヒプノセラピーにおける催眠には、守られている大切なルールがあります。
1.意識は決してなくなりません:
セラピストの言葉も、周りの音も聞こえています。ただ、心地よくて、どうでもよく感じられるだけです。いつでも自分の意思で目を開けることができます。
2.言いたくないことは話す必要はありません:
潜在意識は、あなたを守る最高の味方です。もし話す準備ができていないことが浮かんできても、それを無理に話す必要はありません。あなたは完全に守られています。
3.あなたの意思に反することは起こりません:
「〜しなさい」と命令されて操られるようなことは絶対にありません。セラピストはあくまで、あなたの心の旅を安全に案内するガイド役です。旅の主役は、常にあなた自身です。
4.ヒプノセラピストは催眠療法の専門家です:
催眠療法を施術するセラピストは、専門の教育機関の資格保持者であることが必要条件です。人間の記憶や潜在意識を扱う以上、専門の教育を受けてない人間による誘導で潜在意識にアクセスすることは非常に危険を伴います。必ず資格のある経験豊富なセラピストにセッションを受けて下さい。
なぜ催眠状態がセラピーに効果的なのか
◆ 潜在意識の奥底にあるトラウマ
人間の意識は顕在意識10%、潜在意識90%で構成されていると言われています。生きていく上で問題となっている過去のトラウマや否定的な感情の原因は、通常の意識状態には登って来ない、潜在意識の奥深くにあります。この奥底の原因へとアクセスしてその部分を癒すことが必要となります。
しかし通常の意識、つまり顕在意識が活発な状態では潜在意識にアクセスすることは非常に難しいのです。なぜならば潜在意識とは人間の本質の意識であり、とても素直で受け入れやすく、現実・非現実の区別もつきません。このような潜在意識へ危険なものが侵入しないように「判断のフィルター」をかけて常に警戒をしているのが顕在意識であり、防御している状態にあります。
◆ 催眠トランスでの高い効果
ヒプノセラピーはこの潜在意識にアクセスするために、顕在意識が一旦休止する意識状態、つまり判断のフィルターが弱まり、潜在意識が優勢になってアクセスしやすい状態を意図的に作り出します。その状態がトランス状態と言われる催眠状態です。その催眠状態の中で問題となっているネガティブな思い込みを書き換えて根本を癒していきます。
潜在意識にアクセスして効果的にポジティブな変化を起こすことで前向きな生き方、とらえ方ができるようになります。自分への肯定が自信となることで、本来の自分を取り戻し、自分を解放して自分の可能性を大きく広げて行くことができます。