年齢退行による改善例

 

 催眠療法の年齢退行療法は、人格形成の段階で作られた幼児期のトラウマを解放することにより、対人恐怖症、適応障害、不安症、パニック障害、うつ症状、過食症などの症状を改善へと導きます。

 心の問題は無意識の反応によるものです。自分でも意識していない心のネガティブな反応は、潜在意識の奥に抑圧されている感情によるものです。人生に対する慢性的な不安、人間不信、自己否定は、受け入れてもらえなかった感情を抑圧し続けて来た結果です。幼児期にはどうにもできなかった悲観的な強い思い込み、否定的な決めつけは、今もなお無意識という潜在意識の反応となって、人生に悪影響を及ぼしています。

 それらの感情を催眠療法の専門家と共に解放することで、心の平安、安心を取り戻すことができるのです。

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年齢退行を受けたご相談者が実際の症状が改善された例をご紹介いたします

(年齢、性別などの相談者の特性、内容の詳細については変更して掲載している部分もあります)


  事例1:対人恐怖症・視線恐怖症の改善 

相談者の症状

20代男性。人と話すときに相手の目を見ることができず、視線を合わせることに強い恐怖を感じていました。特に、権威のある人物(上司など)に対して症状が強く現れ、仕事にも支障をきたしていました。

年齢退行によるアプローチ

 催眠療法で過去にさかのぼったところ、小学校の教室の場面が現れました。授業中に先生から厳しく叱責され、クラス全員の前で恥をかかされた経験を思い出しました。その時、「自分はダメな人間だ」「人から注目されると、また恥ずかしい思いをする」と強く思い込んでしまったのです。 

得られた効果

セラピーの中で、大人の視点から当時の状況を再評価しました。「先生は、彼自身を否定したかったのではなく、単にその時の行動を注意しただけだったのかもしれない」「周りの子供たちも、すぐにそのことを忘れてしまっただろう」と理解を深めていきました。そして、傷ついた小学生の自分(インナーチャイルド)を大人の自分が慰め、安心させるというワークを行いました。

その結果、セッションを重ねるうちに、人と目を合わせることへの恐怖が徐々に薄れていきました。 最終的には、上司とも自然に会話ができるようになり、自信を持って仕事に取り組めるようになりました。これは、過去の出来事によって形成された「人と視線を合わせると危険だ」という無意識の思い込みが修正されたためです。

 


  事例2:原因不明の不安感とパニック発作の解消 

相談者の症状

30代女性。特別な理由もないのに、突然強い不安感に襲われたり、電車の中で息苦しくなったりするパニック発作に悩まされていました。 

年齢退行によるアプローチ 

年齢退行を行ったところ、3歳だった頃の記憶が現れました。デパートのおもちゃ売り場で母親とはぐれてしまい、大勢の人ごみの中で一人ぼっちになった強い恐怖と絶望感を追体験しました。当時は「自分は見捨てられたんだ」「もう二度とお母さんには会えないんだ」と感じていました。

得られた効果

この「見捨てられ不安」が、現在の彼女のパニック発作の引き金になっていたことが分かりました。セラピーでは、その時の感情(恐怖、悲しみ、寂しさ)を安全な環境で十分に感じ、解放しました。そして、大人の彼女が3歳の自分を優しく抱きしめ、「もう大丈夫だよ、一人じゃないよ」と語りかけ、安心感を与えました。

このセッションの後、原因不明の不安感に襲われることがなくなり、電車にも安心して乗れるようになりました。 これは、幼児期に経験した強烈な恐怖体験を癒し、心の安全基地を再構築できた結果と言えます。

 


  事例3:長年の罪悪感からの解放 

相談者の症状

50代女性。常に「自分は何か悪いことをしているのではないか」という漠然とした罪悪感を抱えて生きてきました。幸せになることに罪悪感を感じ、自分から人間関係を壊してしまうような行動を繰り返していました。 

年齢退行によるアプローチ

 催眠状態で過去を探っていくと、幼い頃に飼っていたペットが死んでしまった場面にたどり着きました。自分の不注意でペットが死んでしまったと自分を責め、「私が悪い子だったからだ」と固く信じ込んでいました。この出来事が、人生全体に影響を及ぼす罪悪感の根源となっていたのです。 

得られた効果

セラピーを通して、ペットの死は自分一人のせいではなかったこと、それは不幸な事故であったことを客観的に理解していきました。当時の自分を許し、罪悪感を手放すプロセスを丁寧に行いました。

その結果、長年彼女を苦しめてきた罪悪感から解放され、自分を大切にし、他人との健全な関係を築くことができるようになりました。自己肯定感が向上し、心から幸せを感じられるようになったのです。

 


  事例4:慢性的なうつ状態と無気力の改善 

相談者の症状

30代男性。社会人になってから、常に気力が湧かず、何事にも興味を持てない「うつ状態」が続いていました。「頑張らなければならない」という強いプレッシャーを感じる一方で、「どうせ自分には価値がない」という自己否定感に苛まれ、朝起きるのも辛い状態でした。 

年齢退行によるアプローチ

催眠状態で過去をさかのぼると、小学生だった頃の記憶にたどり着きました。両親から常に高い期待をかけられ、「良い子でいなければならない」「常に一番でなければならない」というプレッシャーの中で生きていました。テストで良い点を取っても褒められることはなく、「もっと上を目指せ」と言われるだけでした。自分の感情や欲求を押し殺し、親の期待に応えることだけが自分の存在する価値だと信じ込んでいました。 

得られた効果

セラピーを通じて、彼は「ありのままの自分には価値がなく、何かを達成しなければ愛されない」という、幼少期に形成された強固な思い込み(ビリーフ)に気づきました。 セラピーの中で、期待に応えられず苦しんでいた小さな自分を大人の自分が受け入れ、「もう頑張らなくてもいい」「そのままで価値がある」と伝えるワークを行いました。

その結果、他者からの評価を過剰に気にすることがなくなり、自分の中から湧き上がる「これをやってみたい」という自然な意欲を感じられるようになりました。 自分を縛り付けていた「~ねばならない」という強迫観念から解放され、慢性的なうつ状態と無気力が改善し、心の平穏を取り戻すことができました。

 


  事例5:過食症の背景にある孤独感の癒し 

相談者の症状

30代女性。仕事のストレスを感じると、甘いものを大量に食べてしまう「過食」がやめられず、その後、激しい自己嫌悪に陥るという悪循環に悩んでいました。常に心の中に埋められないような空虚感や孤独感を抱えていました。

年齢退行によるアプローチ 

年齢退行を行うと、彼女がまだ幼く、妹が生まれたばかりの頃の場面が現れました。両親は赤ちゃんの世話にかかりきりで、彼女は「自分は後回しにされた」「見捨てられた」という強い寂しさを感じていました。その時、祖母が彼女を不憫に思い、お菓子を与えてくれました。お菓子を食べている間だけは、その寂しさや悲しさが紛れ、一時的な安心感を得ることができたのです。

得られた効果

この体験から、彼女の潜在意識は「寂しい時、不安な時は、食べれば心が満たされる」という程式を学習してしまっていたことが明らかになりました。 つまり、過食は「愛情不足」や「孤独感」を埋めるための代償行為となっていました。

セラピーでは、寂しさに耐えていた幼い自分(インナーチャイルド)の気持ちに寄り添い、その感情を十分に解放しました。そして、大人の自分がその子を抱きしめ、「寂しかったね、もう大丈夫だよ」と安心感を与えました。食べることでしか満たせなかった心の穴を、自分自身への愛情や自己受容で満たす方法を学んでいった結果、ストレスを感じても過食に走ることがなくなり、心の安定を取り戻すことができました。

 


  事例6:原因不明の身体の痛み(心身症)の緩和 

相談者の症状

40代女性。数年前から、病院で検査をしても特に異常が見つからないにもかかわらず、肩や背中に鉛のような重い痛みを感じ続けていました。マッサージや整体に通っても、その場しのぎにしかならない状態でした。

年齢退行によるアプローチ

催眠状態で痛みの原因を探っていくと、彼女が20代で最初の子供を産んだ直後の記憶にたどり着きました。夫の協力が得られず、一人で育児と家事のすべてを完璧にこなそうと奮闘していました。「私がしっかりしなければ」「母親なのだから弱音を吐いてはいけない」と、すべての責任とプレッシャーを一人で背負い込んでいたのです。

さらに幼い頃に記憶をさかのぼると、長女の彼女は母の外出時にはいつも弟や妹の面倒をみなければいけませんでした。「お姉ちゃんなんだから」という責任を課される幼少期の記憶の場面が現われました。あるゆることを背負い込み、断れない人生を生きて来た自分とやっと向き合い、子供時代の自分を抱きしめることが出来ました。

得られた効果

この「一人で背負い込んだ重圧」が、文字通り身体的な「重さ」や「痛み」として長年表現され続けていたことが分かりました。 彼女は、心に閉じ込めていた当時の怒り、悲しみ、孤独感をセラピーの中で初めて言葉にして解放することができました。

さらに、その重荷を象徴的に降ろすイメージワークなどを行ったところ、セッションの最中から実際に肩が軽くなるのを感じました。 心理的な負担が身体症状を引き起こしていたこと(心身症)を深く理解し、自分に課していた「完璧でなければならない」という思い込みを手放したことで、長年苦しんできた原因不明の痛みは劇的に緩和されました。