大人のコミュニケーションとは~RACの実践~
RAC:尊重し合う大人のコミュニケーション
〜「私はこう感じ、こうしたい」を伝える技術〜
人との対話の中で、つい「あなたはいつもこうだ」「なぜわかってくれないのか」といった言葉を口にして、泥沼の言い争いに発展してしまった経験はありませんか。
親子関係に課題を抱えてきた方にとって、最も必要なのは「相手をどう変えるか」ではなく、自分の中に湧き上がる「感情」を正当に扱う技術です。
今回は、プレスマン夫妻が提唱するRAC(Respectful Adult Communication)というモデルを通じて、自分も相手も尊重しながら、本心を届けるための具体的な方法を紐解いていきます。
感情を名付け、言葉にすることは、自分自身を取り戻すプロセス
1. 感情を「所有」するための4ステップ
RACの核心は、まず自分自身の感情を他人のせいにせず、自分自身のものとして「所有」することにあります。
- 認める:自分の中に確かな感情(怒り、悲しみ、恐れ、寂しさ等)があることを認める。
- 名付ける:その感情に適切な名前をつける。
- 権利:その感情を経験する正当な権利が自分にあることを許す。
- 受け入れる:自分の感情は自分にとって大切なものであると受け入れる。
このプロセスを経て、自分の感情を大切に扱えるようになると、無理に言葉を飾ることなく「私はこう感じている」とシンプルに伝える準備が整います。
2. 相手の防衛を引き出さない「伝え方」
私たちは強い感情を感じたとき、無意識に「名指しで責める」「『あなたはいつも』と決めつける」「過去の不満を持ち出す」といった攻撃的な言葉を選びがちです。
しかし、人は攻撃されていると感じると、聞く耳を閉じ、反撃の準備(防衛)を始めてしまいます。RACモデルの大きな特徴は、評価ではなく「話し手の内面の状態」を述べることに徹する点です。自分の感情を客観的に伝える言葉は脅威を与えないため、相手がこちらの言葉を「聞く」ためのスペースを用意してくれます。
3. 「私はこう感じ、こうしたい」という自律モデル
「あなたが〇〇すると、私は寂しく感じます。だから、次は〇〇してほしいのです」。
このモデルは非常に単純ですが、多くの人がその実践的な手法を知りません。感情を認識し、適切に表現し、自分の期待をはっきり明言すること。この明瞭で攻撃的でないコミュニケーションこそが、対等な大人同士の信頼関係を築くために有効な一歩となるはずです。
現場で見つめる真実:攻撃ではなく「素直な思い」を届ける
かつてクライアントからご夫婦関係のご相談を受ける中で、ご主人が隠していたあることが発覚し、その話し合いをするために、このRAC方式をお伝えしました。「私はこう感じ、こうしたい」を明確に伝えることで、ご夫婦は衝突の難を逃れることができました。感情的な言い合いにならずに、お互いの思いを確認することができたことで、しこりが残らずに、うまく対応することができたのです。
親密な関係において、この方法で相手に伝えると、互いに冷静にお互いの思いを話すことができるようになります。「思い」というのは、言い分ではなく、「素直な相手への思い」です。"家族なら遠慮は不要"、"本音で話す=言いたいことを言う"、これらは大きな間違った刷り込みです。感情の処理がわからないことで、人間関係、特に親密な関係においては、安定した絆で繋がることが非常に困難になる傾向があります。
「よそよそしさ」か、あるいは「戦闘モード(または口も利かない冷戦状態)」しか存在しない家庭というのは、実は少なくありません。
「あんたは、いつもそうっ!!」「嘘ばっかり並べて、絶対本当のことが言えないんだからっ!」
このように責め立てれば相手は心は閉ざし、反撃に出る準備に入ります。しかし、
「あなたが私に隠して嘘を言っていたことを知って、私はとても傷付いてショックを受けたの。私は、相談相手として信頼される存在ではないんだと感じるし、そう思うと、ひどく孤独を感じて、悲しい。」
というのであれば、事実と感情が明確に説明されており、相手にとって脅威的ではありません。
このような言葉は、話し手である自分のことを言っているのであって、聞き手である相手のことを言っているのではないからです。防衛を必要とするような攻撃性がないので、反撃への準備はを必要としない、心理的な安全領域が生まれやすくなります。
自分の感情を認め、適切に表現することは、人間関係において相手を理解しながら信頼関係を築くには、基盤となる大切な要素です。自分の感情と向き合うトレーニングには、催眠療法はとても有用なアプローチの一つです。感情にフォーカスしながら、記憶やイメージの世界を体験する手法は、新しい理解と意味づけを得られることで、内面的な気付きや、成熟した視点へとリフレーミングを促します。それによって現実の人間関係に変化が現れるのは、潜在意識の最適化が進んだ結果と言えるでしょう。
自立した大人同士の「対話」を始める
大人のコミュニケーションとは、自分の感情を自分自身で正当だと認め、それを適切に表現する誠実さを持つことです。
RACというスキルを身につけることは、かつて奪われた「自分の感情を持つ権利」を今、自分の手に取り戻すプロセスでもあります。潜在意識を整え、新しい伝え方を手に入れることで、あなたの人間関係はより穏やかで深いものへと変わっていくでしょう。
📚 参考・関連文献
- ステファニー・ドナルドソン・プレスマン、ロバート・M・プレスマン 著 / 斎藤 学 監訳
『自己愛家族:アダルトチャイルドを生むシステム』(金剛出版)
「本当の思い」を伝え、絆を深める技術を学ぶ
対人関係のストレスを減らし、心から信頼し合える関係を築く。
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